●目的と結果
本実験の目的は、従来行われていたオリーブの塩漬け方法から作業手順を簡略化しつつ良質のオリーブの塩漬けを得ることにある。
従来、Web上で見受けられる手順では、渋抜きの工程を短縮する目的で、なりクチを切る、もしくは小さい穴を開ける作業が必要であり、そのカット作業を行わない場合、苛性ソーダ溶液に漬けて渋を抜くという方法が一般的にとられている。他、塩分濃度を極限まで上げ作業を簡略化する方法もあるが、その場合、成果物の塩分濃度も非常に濃く塩辛いものができるという欠点がある。
本実験では作業工程の簡略化分を、作業各工程の日数を増やすことにより補う。苛性ソーダなど薬品を使う作業、なりクチを切るという作業を排除したにもかかわらず、非常に良好な結果を得たのでここに報告する。
また、目的の塩漬けだけでなく、派生型であるオイル漬けの実験も実施した。引き続き評価を続け、今後主流になると予想される、次世代塩漬けオリーブのためのデータを蓄積する。
前回の記録は、アク抜き中の記録、
今回の記録は、アク抜き後、下漬け、本漬け、瓶詰めまでの記録。作業は終了。
実験は、以降評価段階に入る。
●概要
作業対象
オリーブ 1群 30April2006 収穫 アク抜き開始
オリーブ 2群 7May2006 収穫 アク抜き開始
オリーブ 1,2群共、紫色に熟したものは別容器にて作業、都合両群には緑組、紫組がある。
作業内容
アク抜き 1群 17日間、2群 10日間
(以降の作業は収穫時期を考慮せず同時に作業した)
下漬け 5%液 17May2006 4日間
本漬け 10%液 21May2006 9日間
塩茹で 10%液 30May2006 −
瓶詰め 6%液 30May2006 −
●各作業詳細
-- 下漬け --
下漬けの目的は、実験対象(以下オリーブ)が濃い塩分にさらされた場合、オリーブ内部から急激に水分が失われ、テクスチュアの劣化(しわしわ)を招く。その劣化(しわしわ)を防ぐ目的で、一度に目的の塩分濃度にせず、段階的に塩分濃度を上げる手法である。あくの「抜け」もよくなる。
欠点として、一度下漬けに入ると、渋抜きで行っていたように、毎日水を替えることができなくなる。酵素の働きを止める、細菌、カビの発生を抑える、には塩分濃度が低すぎ非常に繊細な工程であり細心の注意が必要である。本実験においても、各群の「紫組」は、この実験工程中に失われた。可能な限り最小の期間ですませるべきである。
覚悟を決め、流水で洗浄後、たっぷりの下漬け液に漬ける。
下漬け液、質量 5% Natural Sea Solt Unrefined No Additives(以下食塩)、Britaろ過水(以下ろ過水)
(落し蓋推奨)
期間 4日
-- 本漬け --
本漬けの目的は、オリーブの塩分濃度を保存に適した濃度まで引き上げることである。また、味付けでもある。何年でも常温保存ができる梅干の場合、塩分18% という数字が採用されている、一般的に10% を切ると常温での長期保存が困難になり、いわゆる、「要冷蔵」となる。かといって闇雲に塩分濃度を上げ保存が利いても、塩辛くて食べられない。これでは腐らない、減らない困った保存食になる。また、薄いと、わぁ!いくらでも食べられる!ということになりかねないので、漬物程度の、ちょっと食べて満足くらいが、ええ塩梅かと思われる。漬ける期間にもよるが漬け液の塩分濃度、がそのままオリーブの塩分濃度にはならないので、目的の塩分より、やや濃い目の漬け液を用意する。塩分濃度は、漬け液の水の質量と塩の比であり、オリーブの質量は含まない。本漬け後、風邪をひいてしまい、本漬け期間がかなり長期になってしまったが、もっと短くても良いはずだ。
流水で洗浄。本漬け液に漬ける。やわらかくなりすぎたものは、除去する。
下漬け液、質量 10% 食塩、ろ過水、オリーブが充分沈める液面の高さを確保する。
(落し蓋推奨)
期間 9日
-- 塩茹で --
茹でる目的は、殺菌、調理、酵素の働きを止める。殺菌することにより保存性を高め、加熱することにより、やわらかくなり食感が高まる。酵素の働きは、塩分でも止められるはずだが、10% 濃度の本漬け液でも、オリーブの酵素の働きは完全には止められなかったようだ。当初茹でる工程も省こうとしたが、熟した「紫組」が漬け段階で腐敗(発酵?)したのを見て、根性がなくなり急遽、塩茹で工程を追加採用した。
茹で液 質量 10% 食塩、ろ過水
同時に煮沸消毒した瓶を用意する。
茹で時間 1分
ゆでる前に、1粒1粒手で触って確認し、やわらかくなりすぎたものは除去する。
ゆでたあと、冷ますと良いらしいが、雑菌に触れる機会を最小限にするため、消毒瓶に直接投入した。
瓶の下のほうは、加熱が進んでブヨってるかもしれない。これは後の評価時に注意を払うべきである。
-- 瓶詰め --
瓶詰めの目的は、オリーブおよび保存液が空気に触れ、酸化や腐敗するのをを防ぐ。香味料を使う場合で風味を移す意味もある。可搬性を高め、高品質のものは、ラッピング、ラベリングを施しお使い物にも、、なるか?
大量のオリーブを塩茹でしたため、茹で液は煮詰まってしまい、漬け液は改めて作ることにした。また味見してみて塩味が強すぎたので、漬け液の濃度は 6%に下げた。
保存液 質量 6% 食塩、ろ過水
オリーブオイル
煮沸消毒した瓶にオリーブを詰める
オイル漬けの場合、瓶にオイルを注ぐ
塩漬けの場合、保存液を注ぎ、最後にオリーブオイルを注ぐ
オイル漬けは常温保存、塩漬けは念のため冷蔵庫保存。
2週間後に食べられるともあるが、この時点で浅漬けになっているので食べること可能。
ここで香味料、粒胡椒、唐辛子、ニンニク、ハーブ類を好みで入れると良いらしいが、今回がはじめての実験なので基本の塩漬けのみとした。香味料追加の場合、香味が移るのを待つ期間(これが瓶詰め後、2週間の根拠だろうか)が必要とされる。
●作業上の注意
衛生管理。作業前の手洗いはもちろん。用具の消毒も徹底すべきである。煮沸か 35% 以上のアルコール。
アク抜き、漬け期間は、ビニール袋などできちんとカバーする。
漬け期間も油断せず毎日状態を確認する。
浮いたアクに小さなカビのコロニーができることがある。その場合、周りのオリーブとともに、消毒したスプーン等でそーっと除去する。そのため下漬け、本漬け液はたっぷり用意するとよい。
梅干実験の経験上、白いカビは問題ないが、ほかの色のカビはやばい。
落し蓋。今回使用しなかったが、色が悪くなるのは水の表面に浮いているものなので、落し蓋はアク抜き段階から採用すると良いと思われる。塩水にした場合も、漬け液の密度が濃くなるので、浮いてくるオリーブもあり、それらはまた、色も悪くなる。
熟したオリーブ、「紫組」は工程期間を短くするか、初めから収穫しないほうが無難。酵素の働きが活発で、発酵しやすい。また、やわらかく食感も劣る。
全工程を通じて正常なオリーブは、そこそこ硬いままである。やわらかくなったものは、痛み始めてると判断して都度排除すべきである。
順調に進んでいる生オリーブは、アボカドのような、黄緑色のクリーミーな果肉だが、内部に水が浸透したもの、発酵が始まったものは、やはりアボカド同様ブヨッと茶色くなる。基本的に果肉に油分が多いのでそうそう内部に水が入ることは無い。
●評価
公的機関である、同僚のロシア人エンジニアに検味を依頼。優の評価を得る。
研究助手は、実験直後から毎日オリーブをパクパク食べ続け、現在オリーブ断ちの旅に出かけている。(持っていったんかな?)
各工程で、生オリーブを味見するが、苦くて、大丈夫か?と思ったが、その苦味が、最終的にオリーブ独特のうまみになることを確認。1群は、2群に比べアク抜き期間が長い。できてみると、アク抜きが長かった1群はオリーブらしい風味にやや欠ける結果となった。ただこれも、オリーブがちょっと苦手な人、子供さん向けには、いいかもしれない。
●問題点と今後の課題
下漬け工程の最小期間の見極め
下漬け液、本漬け液をよくかき混ぜる。今回は、ともに水を入れた後に塩を入れたので、混ざりが悪く、濃度にばらつきがあったようだ。オリーブの塩分も、絶妙なもの、薄いもの、やたら塩辛いのもある。
次回、香味料の使用
次回、落し蓋の採用
日干しオリーブ(ブラックオリーブになるらしい)実験ができなかった。
酢漬けは、研究助手がきらいなので実験せず。
●謝辞
オリーブ並木教えてくれた奥様
レシピを書いてくれただんな様
味見してくれた同僚
遅れがちな作業スケジュールと衛生面を管理してくれた研究助手。管理栄養士、調理師でもある妻に感謝します。
皆さんも次の秋にどうぞ。
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